
特集●白癬を俯瞰する
| 企画編集 | :原田和俊 |
|---|---|
| 発行 | :2026年2月 |
| 判型 | :A4変型 |
| 頁数 | :80 |
| ISBN | :978-4-287-91066-5 |
| 定価 | :4,400円(本体4,000円+税10%) |
特集にあたって
白癬は白癬菌(皮膚糸状菌:表皮角質層に感染する真菌)による表在性の皮膚感染症である.患者数は多く,足白癬および爪白癬で皮膚科を受診する患者は皮膚科で治療されるすべての皮膚疾患の11.3%を占める.潜在患者はさらに多いと考えられ,2023年に行われた皮膚科医による調査に基づく推計によれば,日本人の13.7%は足白癬,7.9%は爪白癬に罹患している.きわめて多くの白癬患者が白癬に罹患していることを知らないまま,日常生活を送っているのである.
白癬は真菌による感染症である.したがって,適切に対処しなければ,ヒトからヒトへ感染が拡大する.足白癬患者から撒布された白癬菌は湿潤した環境,たとえばサウナ,温泉の脱衣場などで生存しつづけ,白癬菌を踏みつけたヒトの足の角質層へ侵入していく.さらに,家庭内に持ち込まれた白癬菌は風呂のバスマットなどで増殖し,家族内感染を引き起こす.また近年,日本人は猫や犬を,ネズミ退治や番犬としての役割を期待する小動物ではなく,家族の一員として認識するようになってきている.ヒトとペットの接触時間が増加することによって,動物から白癬が感染する機会も増えている.とくに,動物由来の白癬菌は炎症反応を引き起こすため,湿疹と誤診されやすい.
このように,白癬菌に感染していることを気づかずに生活を営む患者も多い一方,皮膚に出現した発疹を水虫と思い込んでいる患者も一定数存在する.そのような患者は,手湿疹による鱗屑や接触皮膚炎,アトピー性皮膚炎で生じた紅斑,丘疹,掌蹠膿疱症による膿疱を,白癬の感染によって生じた病変と自己判断し,過度に悩んだり,OTCの水虫の薬を塗布することで症状を増悪させたりしている.
このように,白癬は,診断や治療に対する患者ニーズが高く,罹患患者も多いことから,皮膚科学の重要な診療・研究領域であり,皮膚科医はこの疾患の診断,治療について,研究を継続してきた.本特集では,皮膚のトラブルを第一線で対処している美容皮膚科医の先生方が,現在の白癬の診断・治療を俯瞰できることを目的として企画された.
本特集を最初から順番に紐解いていただければ,白癬の疫学,白癬を引き起こす真菌の特徴および形態,白癬の診断と治療,そして白癬の予防法を復習しながら,白癬を俯瞰することができる.本企画の特徴として,美容皮膚科では「顔」を診察することが多いと思われることから,顔面白癬の項目を設けた.また,誤診されやすい動物由来の白癬に関しても解説することとした.さらに,爪の変色・変形を爪白癬と診断され,無効な治療法を施行されている患者も少なくない.これらの疾患は皮膚科専門医でも誤診する可能性がある,ピットフォールである.
美容皮膚科を受診し,美を追求する患者のなかにも,水虫をはじめとする,皮膚疾患に悩む患者は多いと思われる.本特集が先生方の診療の幅を広げることに役立てば幸いである.
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