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月刊糖尿病2012年10月号 SOLD OUT
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2012年9月20日発売
A4変型判/128頁 価格:本体 2,500円+税
ISBNコード:978-4-287-82041-4
全ページカラー印刷
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企画編集/寺内康夫 |
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企画編集/佐藤 誠 |
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画像をクリックするとサンプルをご覧いただけます |
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糖尿病に伴う癌リスクのエビデンス
糖尿病治療の最終的な目標は健康な人と変わらない日常生活の質(QOL)の維持,健康な人と変わらない寿命の確保にあり,そのためには糖尿病合併症の進展阻止・予防が不可欠である.糖尿病合併症には虚血性心疾患や脳卒中などの血管合併症に加えて,さまざまな部位の癌の発生頻度が増加することがわかってきた.さらに,糖尿病治療薬によって癌の発生頻度が増減するとの報告もあり,糖尿病合併症としての癌が注目されるようになってきた.そこで本特集では,糖尿病・肥満患者における癌リスクについて最新の知見を紹介したい.
まず,糖尿病に伴う癌リスクに関して,日本と海外の疫学データと想定される機序に関する解説の項を設けた.続いて,糖尿病治療薬が悪性腫瘍進展に及ぼす影響を,その疫学データと想定される機序に関する項を設けた.一般に,インスリン分泌促進・補充型の薬剤は癌のリスクを軽度上昇させ,インスリン抵抗性改善薬は減少させるとの報告が多いが,糖尿病・糖尿病治療薬によってリスクが増大する悪性腫瘍と,逆に減少するものが存在する点は注目に値する.最近,メトホルミンの抗腫瘍効果,ピオグリタゾンと膀胱腫瘍との関連,インクレチン関連薬と膵腫瘍との関連が問題になっており,さらに掘り下げて専門家に解説いただくこととした.
糖尿病・糖尿病治療薬と発癌リスクとの関連に関する臨床研究では,観察期間が短い,癌の発症症例が少ない,さまざまな交絡因子が関与するなどといった限界があり,十分なエビデンスが得られにくい問題点が指摘されている.また,癌の発症というまれなイベントを検討するには,ランダム化比較試験は不向きとされている.したがって,対象集団の規模が大きく,観察期間が長い研究を複数用いることで,さまざまな交絡因子による可能性を十分に検討したうえで,糖尿病・糖尿病治療薬と発癌リスクとの関連の有無を明らかにしていく必要があるだろう.併せて,糖尿病で認められる諸病態(肥満,高血糖,高インスリン血症,脂質異常症,脂肪細胞由来の生理活性物質の量的・質的異常など)が悪性腫瘍の進展とどのようにかかわっているのか,基礎的な検討をもっと進める必要があるだろう.糖尿病学と腫瘍学が融合することで,新たな学問分野が開拓されることを期待したい.
糖尿病患者の高齢化が進むと,悪性腫瘍が今まで以上に重大な合併症のひとつとして認識される時代になることが予想される.癌に対する効果も意識した糖尿病治療薬の選択が必要な時代が到来するかもしれない.
寺内康夫
(横浜市立大学大学院 医学研究科 分子内分泌・糖尿病内科学 教授)
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糖尿病と睡眠時無呼吸
糖尿病患者のほとんどが2型糖尿病であるように,睡眠時無呼吸症候群患者の大多数が“いびき”を主症状とする閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea;OSA)である.
OSAで出現する短時間の覚醒反応(睡眠の質の悪化)と間欠的な低酸素血症が毎晩数百回も繰り返されることによって,循環器疾患や代謝疾患を始めとしたさまざまな病態が出現し,患者の予後を悪化させることが明らかになってきた.このような背景のもと,米国心臓協会(AHA)と米国心臓学会(ACCF)は,それぞれの機関誌CirculationとAm J Coll Cardioに,「睡眠時無呼吸と心臓血管疾患」という共同Scientific Statementを同時発表した.また,国際糖尿病連合(IDF)も,「2型糖尿病と睡眠時無呼吸」というConsensus Statementを発表し,Web上や小冊子を発行して,一般人にも啓発活動を開始した.いずれも2008年のことで,高血圧,心臓血管疾患,糖尿病患者の背景にOSAが存在することを疑うべきで,OSAの発見・治療が,それぞれの病態改善につながりうることを,啓発している.
高脂肪食(栄養バランスはよくないが)の流通によって,肥満人口が世界的に増加している現在は,noncommunicable disease(生活習慣病)の中心は,メタボリックシンドロームである.欧米ではメタボリックシンドロームに,OSAを加えてSyndrome Z(“いびき”の音を意味する“Z”)が提唱されており,肥満症では脂肪細胞の量的異常に分類されているOSAが,質的異常に分類される循環器・代謝疾患と深くかかわることに由来する.日本でも中年男性を中心に肥満化が進んでいるが,世界の肥満度ランキングは189ヵ国中,韓国(141位)や中国(151位)より下位の166位で,世界的にみれば肥満者の数は少ない.それにもかかわらず,肥満と強く関連する糖尿病などの有病率は欧米人と変わらず,発症率は欧米人より高いといわれている.日本人は,糖尿病発症に関して肥満に対する感受性が高い(肥満の程度が軽くても糖尿病を発症しやすい)のである.OSA発症に関しても,日本人は肥満に対する感受性が高いことが,1990年代後半以降のOSA診療および疫学研究の発展に伴って明らかになってきた.OSA患者の約4割はBMI<25の非肥満であり,有病率も欧米と変わらない.日本では,OSAは肥満者の疾患というstereotypeは取り払う必要がある.
検査診断学が進歩した糖尿病と異なり,OSAの存在に気づかないまま診療している医療者は少なくない.本特集は,糖尿病診療を行うすべでの医療関係者がOSAを理解して,患者の早期発見と早期治療を行うことにより,糖尿病患者のQOLならびに予後を改善することを目的に企画した.前半ではOSAがSyndrome Zに組み込まれた由縁,その疫学的,病態生理学的背景を4人の専門の先生方から解説していただき,後半では日本人の肥満とOSAとの関わりを私が解説し,最後に日本で初めて行われた糖尿病患者の睡眠時無呼吸症に関する疫学調査Japanese Epidemiology DM and SAS(JEDAS)とその後について解説していただいた.
“いびき”は,決して「よく寝ている証拠」ではない.“いびき”は助けを求めるOSA患者の叫び声である.「いびきはかいていませんか?」の一言が,患者の日常や将来を変えるかもしれない
佐藤 誠
(筑波大学 医学医療系 睡眠医学寄附講座 教授,筑波大学附属病院 睡眠呼吸障害診療科 科長)
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特集1●糖尿病に伴う癌リスクのエビデンス
特集にあたって/寺内康夫
I.糖尿病に伴う癌リスク
1.日本と海外の疫学データ/能登 洋 2.糖尿病が癌リスクを高める機序/篁 俊成 他
II.糖尿病治療薬と癌リスク 1.総論/寺内康夫 他
2.メトホルミンの抗腫瘍効果/田島一樹 他
3.ピオグリタゾンと膀胱腫瘍/綿田裕孝 他
4.インクレチン関連薬と膵腫瘍/加来浩平 他
・セルフトレーニング -チェックリスト問題と解答-
特集2●糖尿病と睡眠時無呼吸
特集にあたって/佐藤 誠
1.Syndrome Z/陳 和夫 2.糖尿病と睡眠時無呼吸の疫学/谷川 武 他
3.Intermittent Hypoxiaと糖尿病/山内基雄
4.睡眠障害と糖尿病/田中春仁 5.日本人の肥満と睡眠時無呼吸/佐藤 誠
6.内分泌・代謝内科専門医からみた睡眠時無呼吸−JEDASとその後−/田中俊一
連載
・テーラーメイド医療〜糖尿病における現状と展望〜
第5回 肥満関連遺伝子の最新情報
原 雄一 他
・糖尿病の運動療法
第3回 運動の慢性効果
押田芳治
・糖尿病に合併する感染症
第35回 膠原病と感染症
田中良哉
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訂正文
月刊糖尿病2012年10月号において,以下の箇所に誤りがありましたので訂正いたします.
・p42の表1
(誤)Azoulay L et al(文献12):有意差「なし」
(正)Azoulay L et al(文献12):有意差「あり」
・p42の表1
(誤)Li W et al(文献11):有意差「あり」
(正)Li W et al(文献11):有意差「なし」
・p42の表1 表下の以下の用語
(誤)プロペンティ・スコア
(正)プロペンシティ・スコア
(誤)
↓↓↓
(正)
皆様にご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます.
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