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月刊糖尿病 157号
月刊糖尿病157号(Vol.17 No.3 2025)

特集●メタボリックシンドローム・肥満症と糖尿病
   〜日本人の健康寿命延伸を目指して〜

企画編集:下村伊一郎,西澤 均
発行:2025年12月
判型:A4変型
頁数:84
ISBN:978-4-287-82154-1
定価:4,400円(本体4,000円+税10%)

特集にあたって

 2000年に日本発の「肥満症(obesity disease)」の概念が日本肥満学会より発表され,2005年に内臓脂肪症候群としてのメタボリックシンドロームの診断基準が日本内科学会を中心とした8学会合同で策定された.2008年には内臓脂肪蓄積に着目した特定健診・保健指導制度が開始され,肥満症・メタボリックシンドロームが医療現場の治療医学から保健施策・予防医学へと展開した.肥満と肥満症を明確に区別し,医療介入すべき対象を明確にしたこと,そしてBMIのみならず,体組成,とくに内臓脂肪蓄積を病態基盤としてとらえたわが国の肥満症およびメタボリックシンドロームの概念は,世界に先駆けた日本発のオリジナルな病態の捉え方で,医療従事者のみならず一般市民にもわかりやすく,これが治療医学のみならず,予防医学にも展開できた一因ではないかと思う.そのなかで,特定健診・特定保健指導制度は国民皆保険制度を基盤とした日本独自の取り組みでもあり,その成果・エビデンスを学び,保健・予防医学のさらなる発展を期したいと考える.
 「月刊糖尿病」では,2012年11月号において「メタボリックシンドロームと糖尿病〜日本人の健康増進のために〜」という特集が組まれて10年以上が経過した.その間,基礎医学,臨床医学が大きく進展し,食嗜好や遺伝素因に関する知見,内臓脂肪,皮下脂肪の発生・病態生理学,肝臓,骨格筋,心血管,膵・腎を含めた異所性脂肪の代謝・脳心血管・腎連関はじめ慢性臓器障害の病態解明など大きな進展をみせた.診療面では,2014年に高度肥満症に対する減量・代謝改善手術のうち腹腔鏡下スリーブ状胃切除術が保険収載され,また,2024年には約30年ぶりの肥満症治療薬が上市され,肥満症のチーム医療体制の構築が急務である.
 このような現状を踏まえ,このたび,「メタボリックシンドローム・肥満症と糖尿病〜日本人の健康寿命延伸を目指して〜」と銘打って特集を組む機会をいただいた.概念,病態,予防医学,治療介入,エビデンスそれぞれの分野のオピニオンリーダーの方々に執筆をお願いした.最新の知見に触れていただき,日本発のメタボリックシンドローム・肥満症と糖尿病の理解を深めていただければ幸甚である.

下村伊一郎
(大阪大学大学院 医学系研究科 内分泌・代謝内科学 教授)
西澤 均
(大阪大学医学部附属病院 糖尿病・内分泌・代謝内科 病院教授)

目次

  1. メタボリックシンドローム,肥満症の概念,診断基準/小林基子,西影星二,廣田勇士,小川 渉
  2. 内臓脂肪組織の過剰蓄積に関わる環境因子/益崎裕章,玉城敦子,伊敷洋平,上間次己,本間健一郎
  3. 肥満の遺伝的素因/小嶋崇史,岡田随象
  4. 病態:内臓脂肪蓄積2型糖尿病の病態〜内臓脂肪と皮下脂肪〜/長尾博文,西澤 均
  5. 病態:内臓脂肪蓄積と慢性臓器障害/藤島裕也
  6. 病態:MASLD/MASHと糖尿病/鎌田佳宏
  7. 病態:異所性脂肪と心血管疾患/島袋充生
  8. 行動療法に基づいた生活習慣改善指導:地域・産業保健,医療機関/加隈哲也
  9. 肥満症・糖尿病治療における協奏的チーム医療の展望/北本 匠,前澤喜朗,横手幸太郎
  10. エビデンス:メタボリックシンドローム,観察・介入研究,予防医学的な観点から/津下一代
  11. エビデンス:肥満症,介入研究,医療機関での治療の観点から/岩佐真代,山陰 一,浅原哲子